パーキンソン病・診断

パーキンソン病において大切なことは、「正しい診断」と「長期的な展望をもった適切な治療の展開」です。【診断のポイント】についてQ&Aで説明したいと思います。

Q1. パーキンソン病の診断はどうするのか?
Q2. パーキンソン病ではMRIで脳に異常がない?
Q3. パーキンソン病でも「ふるえ」がないことがある?
Q4. パーキンソン症候群って何ですか?
Q5. くすりの副作用でパーキンソン病になりますか?
Q6. パーキンソン病の初期症状は?

Q1.パーキンソン病の診断はどうするのか?

パーキンソン病の診断は特徴的な症状と診察によってなされます。神経内科専門医またはパーキンソン病診断に慣れた医師であれば、問診と診察によってパーキンソン病を疑う症状があるかがわかります。診察するだけで、だいたいの見当がつけられます。(治療を開始しても症状が良くならない場合には、パーキンソン病でない可能性を再度考える必要があります

Q2.パーキンソン病ではMRIで脳に異常がない?

パーキンソン病では、採血やCT、MRIなどでは特別の異常がありません。したがって、パーキンソン病と似た別の病気(=パーキンソン症候群)でないかを知るためにCTやMRIをとります。症状が似ていても治療法はちがうことがありますから、パーキンソン病かパーキンソン病と似た別の病気(=パーキンソン症候群)なのか、最初に正しく診断されることが大切です。
 パーキンソン病の患者さんで「あなたのMRIは異常有りません」と言われたら、ある意味で当たり前のことです。

Q3.パーキンソン病でも「ふるえ」がないことがある?

パーキンソン病の2割ぐらいの方では「ふるえ」がありません。「ふるえ」がなくてもパーキンソン病のことがあります。「ふるえ」のことを医学用語で「振戦」といいます。逆に「ふるえ」だけがあって、他の症状(動作がゆっくりになる、ぎこちなくなる、反復動作が下手になる、など)がない場合には本態性振戦という別の病気のこともあります。

 

Q4.パーキンソン症候群って何ですか?

パーキンソン病と似た別の病気がパーキンソン症候群です。したがって、パーキンソン症候群にはいろいろな病気が含まれています。脳の神経細胞の機能が障害されて神経細胞死が生じているもの(神経変性疾患)、多発性脳梗塞(脳に小さい脳梗塞が多数できた場合)、正常圧水頭症、脳腫瘍などのほか、ホルモンの病気や内臓の病気などでもパーキンソン病と似た症状が出ることがあります。パーキンソン病では L-DOPA製剤(メネシット、ネオドパゾール、マドパー、ECドパールなど)が効果的ですが、パーキンソン症候群ではL-DOPA製剤の効果はあまり期待できないことが通常です

Q5.くすりの副作用でパーキンソン病になりますか?

薬の副作用でパーキンソン病にはなりませんが、薬の副作用でパーキンソン病と似た状態になることがあります(=薬剤性パーキンソニズム)。われわれの経験では、薬剤性パーキンソニズムで寝たきりになってしまった人もおられました(もちろん、薬をやめて改善しましたが)。
 原因となる薬にはいろいろありますが、一部の精神安定剤が原因となっていることが圧倒的に多いです。したがって、パーキンソン病症状がある方は担当医師に「定期的に服用しているくすりをすべて見てもらう」ようにして下さい。

Q6.パーキンソン病の初期症状は?

パーキンソン病の患者さんの多くは「手や足のふるえ」で気づかれます。片方の手または足が小刻みにふるえるのが特徴です(1秒間に5回ぐらい)。じっとしている時に「ふるえ」が出ます。手足を動かしたり、力を入れると止まることもあります。指をこすり合わせるようにふるえる場合が多く「丸薬をまるめような振戦」と言われます。
 それ以外には、手の動きが悪くなることで気づかれることも多いです。細かい動作、繰り返し動作が下手になります。例えば、歯磨きがしにくい、字が下手になる(小さくなってくる)、などがあります。(試しに、親指と人さし指をリズミカルに素早く叩き合わせてみて下さい。または、踵で床をリズミカルに叩いてみて下さい。パーキンソン病の患者さんでは、うまくできません。特にどちらか片方の手足で動かしにくいです。
 一部の患者さんでは、歩きにくい、片足が前に出しにくい、など歩行の障害できづかれます。

最近の研究では、においが鈍くなる、よく寝ぼける(大きな寝言)などが、発病の前にしばしば認められることがあることがわかってきました。

クリニックからのメッセージ

パーキンソン病と正しく診断されることは大切です。適切なタイミングで有効な治療を開始することによって、将来にわたって病気の症状の進行が変わってくる可能性があるからです。「ふるえ」が出てきた方、前述した初期症状に該当する方は、神経内科医やパーキンソン病の熟練した医師の診察を受けることをおすすめします。
 すでに「パーキンソン病」と診断されている患者さんは、下記のページを是非ご覧下さい。